病院側意見書の排斥理由

高松高等裁判所平成30年(ネ)第17号令和元年8月30日判決より。


しかしながら,まず,P9医師は,当事者である被控訴人の依頼を受けて上記意見書を作成したものであって,中立な立場で意見を述べている鑑定意見に比較して,その信用性が劣るものである。
 そして,その内容は,要旨,ランタスの発売後,その低血糖を特別に言及したものもなく,一般医が通常の処置を行ったとしても正当化されること,本件のような事故・中毒のような場合,一般医師が意識のある患者で,歩行可能な患者を入院させ,経過を見る必要が絶対あったとは言えない,血糖降下剤の場合は強く入院を勧めるが,インスリン低血糖については必ずしも入院させる必要がないこと,本件は通常の救急措置がなされており,プロセスは間違っておらず,通常の救急処置,指導であったというものであるが,結局のところ,鑑定意見と異なる見解を述べている。
 しかしながら,P4医師に注意義務違反が認められるのは,上記で説示した鑑定意見のとおりであって,P9医師の上記意見は採用できない。

 また,上記意見には,一般医師や救急医師は注意義務が軽減されるかのような記載があるが,被控訴人病院は被控訴人(日本赤十字社)が設置運営する総合病院であり,前記で認定したように,当直医が専門外のことで相談したい場合に備えた相談体制も整っていたのであるから,専門医でないとか,救急であるとかいう理由で,その注意義務が軽減される根拠はないというべきである。」

 

P10医師は,被控訴人病院の内分泌代謝科部長であり,被控訴人内部の医師であって,その見解は,P9医師以上に信用性が劣り,なおさら鑑定意見よりも信用性が劣るものである。」

 

 なお、本判決では、内縁の妻の死亡について、内縁の夫に近親者慰謝料として金800万円が認定された事例でもあります。

弁護士 堀 康司
Yasuji HORI

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