実際の減収がない場合における逸失利益認定例

仙台地方裁判所平成27年(ワ)第1627号
平成30年4月24日第2民事部判決

(イ)労働能力喪失率及び喪失期間
 前記前提事実記載の原告の後遺障害の内容からすれば,原告は,本件事故により左手関節脱臼に伴う左手関節の機能障害,左第3,第5中手骨骨折に伴う左第3ないし第5指の機能障害,左第4中足骨骨折後の左足痛について併合8級に相当する後遺障害を負ったと認められる。
 そして,前記前提事実及び前記認定事実のとおり,原告には,現在のところ,本件事故後の減収はなく,時間外労働時間は本件事故前よりも増加していることが認められるものの,原告が長年に亘り,フォークリフトの操縦や荷物の積み卸し等の手指の操作を伴う肉体労働である倉庫業に従事してきたものであり,左手関節及び左第3ないし第5指の機能障害及び左足痛によって倉庫業に従事するにあたり負担が生じていることは否定できないところ,現時点において減収は生じていないことについては原告の努力及び職場である勤務先による担当業務についての配慮による部分も大きいと認められるほか,将来的にも転職等の選択の幅が狭まる等の不利益を被るおそれは否定できないものであること及び原告の症状固定時の年齢等に鑑みれば,本件による原告の逸失利益は,労働能力喪失率25%,喪失期間32年(本件事故当時から原告が67歳に達するまでの期間)として後遺障害逸失利益を認めるのが相当である。

弁護士 堀 康司
Yasuji HORI

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