新型コロナウイルス接種後死亡例と予防接種健康被害救済制度

2021年8月4日副反応検討部会資料1-3-1より
2021年8月4日副反応検討部会資料1-3-1より

 

新型コロナワクチン接種後の死亡例について、2021年8月4日付けの厚生労働省による評価結果では、上記画像で引用したとおり、828事例中825例が「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」とされており、「ワクチンと死亡との因果関係が否定できないもの」は未だ0件です。

 

新型コロナワクチン接種で健康被害が生じた場合には、厚生労働省も広報しているように、被害救済制度があります。

 

この説明にもあるように、健康被害救済制度の審査は、厚生労働省疾病・障害認定審査会において行われます(制度の概要はこちらの資料にわかりやすく整理されています)。

 

そのため、上記で引用したような厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会における因果関係評価とは区別される可能性はありますが、今後も副反応検討部会において「ワクチンと死亡との因果関係が否定できない」ものに該当する事例が皆無であるとするような評価が堅持された場合、疾病・障害認定審査会における審査において、健康被害を受けた人の救済を妨げるような方向での影響が生じないか、とても心配な状況です。

 

不支給とされた場合の不服審査の請求先は、下記図のとおり都道府県となります(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会2020年1月27日資料3-3「健康被害救済制度について」より引用。なお、この資料でも、「認定に当たっては「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする」という方針で審査が行われている」とされています)。

 

国はワクチン接種を推進する上で事前の安全策を十二分に講じる必要があることは言うまでもありませんが、頻度は稀であるとしても、不幸にして接種による健康被害を受ける人が生じる可能性をゼロにすることができない以上、事後の被害救済についても積極的な姿勢を示す必要があるはずです。

 

今後の副反応検討部会及び疾病・障害認定審査会における討議が、被害者救済に資するものとなることを願ってやみません。

 

 

参考までに関係条文を以下に貼っておきます。

 

予防接種法

第五章 定期の予防接種等による健康被害の救済措置

 

(健康被害の救済措置)
第十五条 市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種等を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、次条及び第十七条に定めるところにより、給付を行う。
 厚生労働大臣は、前項の認定を行うに当たっては、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。
(給付の範囲)
第十六条 A類疾病に係る定期の予防接種等又はB類疾病に係る臨時の予防接種を受けたことによる疾病、障害又は死亡について行う前条第一項の規定による給付は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者に対して行う。
 医療費及び医療手当 予防接種を受けたことによる疾病について医療を受ける者
 障害児養育年金 予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳未満の者を養育する者
 障害年金 予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳以上の者
 死亡一時金 予防接種を受けたことにより死亡した者の政令で定める遺族
 葬祭料 予防接種を受けたことにより死亡した者の葬祭を行う者
 B類疾病に係る定期の予防接種を受けたことによる疾病、障害又は死亡について行う前条第一項の規定による給付は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者に対して行う。
 医療費及び医療手当 予防接種を受けたことによる疾病について政令で定める程度の医療を受ける者
 障害児養育年金 予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳未満の者を養育する者
 障害年金 予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳以上の者
 遺族年金又は遺族一時金 予防接種を受けたことにより死亡した者の政令で定める遺族
 葬祭料 予防接種を受けたことにより死亡した者の葬祭を行う者
(政令への委任等)

 

第十七条 前条に定めるもののほか、第十五条第一項の規定による給付(以下「給付」という。)の額、支給方法その他給付に関して必要な事項は、政令で定める。

 

 前条第二項第一号から第四号までの政令及び同項の規定による給付に係る前項の規定に基づく政令は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成十四年法律第百九十二号)第十五条第一項第一号イに規定する副作用救済給付に係る同法第十六条第一項第一号から第四号までの政令及び同条第三項の規定に基づく政令の規定を参酌して定めるものとする。


予防接種法施行令

弁護士 堀 康司
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