整形外科術中に刺入されたスクリューの逸脱という手技ミスを認定した事例

大阪地方裁判所令和4年9月13日判決

3 争点(1)イ(第1手術においてスクリューの刺入方向を誤ったか)について
(1)前記認定のとおり、第1手術において挿入されたスクリューのうち、C4の左右及びC5の左に挿入された各外側塊スクリューは、いずれもスクリューの大部分が脊柱管内に逸脱し、骨への固定性が得られておらず、挿入のし直しを要するものであった。
(2)被告は、第1手術において、スクリューを正確に刺入することは、慎重を期しても困難であり、上記の各スクリューの逸脱は、不可避の合併症としてやむを得ないものであると主張する。
 しかし、鑑定の結果によれば、外側塊スクリューは、一般的には外側塊の中央を挿入ポイントとするところ、第1手術でC4とC5に挿入されたスクリューは、いずれも明らかに挿入ポイントが内側で、かつ挿入角度も明らかに内側に向いていて、大きな逸脱であり、基本手技に従っていないと評価されるものと認められる。さらに、鑑定(補充鑑定を含む)の結果によれば、本件転落事故による本件患者の頸椎損傷は、C5/6椎間板やC5椎弓、外側塊、椎弓根の損傷を含む3コラムの損傷であり、不安定性の強い脊椎損傷であったところ、そのような場合、矯正不足又は過矯正ということを念頭において手術をすべきであるので、術中のアライメント確認を行い、その際に同時に著しいスクリューの逸脱や位置不良を第1手術中に認識することは可能であったと認められる。
 以上によれば、第1手術におけるC4の左右及びC5の左の各外側塊スクリューの刺入方向は誤っており、上記各スクリューの逸脱は、不可避の合併症であるとはいえず、執刀医であるP4医師の過失によるものというべきである。

弁護士 堀 康司
Yasuji HORI

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