食道癌所見の指摘が見逃された事例において余命短縮を前提としても死亡慰謝料を特段減額しないまま認定した裁判例

静岡地方裁判所令和2年(ワ)第29号損害賠償請求事件
令和6年1月25日民事第2部判決

ア P4の死亡慰謝料 2500万円
 前記(2)ウのとおり、P4は、本件見落としの当時、一家の支柱として稼働していたものと認められる。
 また、P4は、静岡県立総合病院において、高度癌専門医療機関である被告病院を勧められ、高度な医療を受けることができると信頼して被告病院を受診したものと認められ(乙A1の9頁等)、他方、被告P5は、平成29年12月の各検査所見に係る本件見落としだけでなく、その後の術前カンファレンスや、術前サマリー等、見落としを認識する機会が複数回あったにもかかわらず、平成30年3月27日に至るまでP4の食道癌の見落としに気付かず、食道癌を進行させるとともに、これに対する治療の選択肢を狭めさせ、P4の死期を早めさせたのであるから、その過失は重大である。
 以上によれば、P4が本件見落とし当時62歳と高齢であったことや、本件見落としがなかった場合、死亡時からの生存の蓋然性が2年程度と認められること等を加味しても、被告P5の不法行為によりP4に生じた肉体的・精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は2500万円とすることが相当である。
イ 遺族固有慰謝料
 原告P1につき150万円、原告P2及び原告P3につき各75万円
 前記アのとおり、P4は、一家の支柱であったと認められるところ、本件見落としによりP4を失ったことによる家族の精神的苦痛を慰謝するためには、同居していた家族である原告P1については、慰謝料150万円が相当であり、その余の家族である原告P2及び原告P3については、慰謝料各75万円が相当というべきである。

弁護士 堀 康司
Yasuji HORI

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